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「働き方改革」で得られるもの
「働き方改革」を実施するための取り組みは多岐にわたり、中小企業の経営者さまはどのような課題から取り組むべきか悩まれていることも多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは“働き方改革で得られるもの”をテーマに、働き方改革の「具体例」と「メリット」をご紹介します。

目次
働き方改革とは
「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。
働き方改革が必要とされる背景には、これから日本の企業が直面する2つの課題が関係しています。
課題「少子高齢化による生産年齢人口の減少」
パーソル総合研究所が発表した「労働市場の未来推計2030」では、2030年には労働需要に対する人手不足が644万人になると予測されています。
採用したくても採用できない企業が益々増え、働き手が補充できない企業では経営に支障がでるなどといった話題が身近となってきます。そのような想像したくない事態に陥る前に、経営課題を見つめ働き方の選択肢や職場環境を整備しましょう。未来予測を変えられない人口減少局面において、業務見直しなどに着手し、人材の確保と定着化に取り組めるかどうかで、企業が存続できるか否かが決まると考えます。
課題「働く人々のニーズの多様化」
働き手の世代や生活環境など、さまざまな要因によって「働き方に対するニーズ」は多様化しています。例えば、1980年〜1990年代半ばに生まれた「ミレニアル世代」と、1990年代後半〜2010年に生まれた「Z世代」では、仕事やキャリアに対してスタンダードとされる考えに以下のような違いがあるとされています。
●ミレニアル世代……仕事とプライベートをきっちり分けながらも両立することを理想とし、自分のキャリアや成長を重視するため、転職を普通と捉える傾向がある
●Z世代……仕事やキャリアに関してはやや保守的であり、サービス残業や職場の飲み会などに対して時代遅れとも考える傾向がある
この他にも、週5回の通勤が叶わない人や、育児や介護をしている人など、働く人々のニーズは多様化しています。そのため、これからの企業には世代ごとの考えを理解し、多様なライフスタイルに寄り添う姿勢が求められます。
<法改正も進む>

「働き方改革」は日本のあらゆる企業で取り組む必要があります。
改革を推進するため、2019年から下記のような法改正も始まっています。
●年次有給休暇の時季指定…ワークライフバランスの確保が目的
●時間外労働の上限制限…長時間労働の是正が目的
●同一労働同一賃金…正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差を禁止する目的
他にも「ダイバーシティの推進」「再就職の支援」「ハラスメント防止対策」など、必要な項目の達成に向け、さまざまな企業が働き方改革に取り組んでいます。
「働き方改革」の具体例
ここからは、働き方改革を推進するための「具体的な取り組み例」をご紹介します。

業務の振り分けを行い、アウトソーシングも視野に
社内の人的リソースを十分に活用するためには、個人の作業における役割分担を明確にすることが重要です。まずは、社内で行われている業務をすべて洗い出し、再度振り分けを行いましょう。この時、社内で振り分けきれない業務は、選択肢の一つとしてアウトソーシング(外部へ依頼)することも視野に入れましょう。
例えば、以下のような業務をアウトソーシングしている企業も多くあります。
●納品作業やシステム入力など直接的な付加価値を生みにくい業務
●プロフェッショナルな部門(IT、経理、人事や人材育成など)であるものの、専任担当がおらず自社内で不得手となってしまっている業務
デジタル技術の活用を加速
DXに取り組み業務をIT化すると、既存の人的リソースの効率的な活用が行えます。例えば、紙ベースの経理処理のデジタル化です。振込データや利用履歴の自動作成が可能になった場合、計算ミスや作業時間を大幅に減少することができ、担当者は別の業務に取り組むことが可能です。
多様な人材の雇用に必要な社内制度の整備
「働き方改革」を考えることは、働く人々の生活の多様性に適応することにつながります。週5回の通勤が叶わない人、介護・育児のために離職した人など、これまでさまざまな事情で働くことを断念せざるを得なかった人材に活躍してもらえるような環境構築、システムの導入を検討しましょう。フレックスタイム・時短・テレワークなど「多様な働き方の提案」を可能にすることで、企業と人材両方にメリットを生むことが可能となります。
過去には、2D/3Dの設計ツール(CAD)を使用できる人材が必要な企業が「定年退職した経験豊富な人材を週3日の時短かつ在宅勤務で再雇用した」などの事例もあります。
働き方改革で得られるもの
【企業側のメリット】

●生産性の向上
働き方に多様性がうまれ、従業員自身が出退勤の時間を調整できるようになれば「閑散期は定時前に帰宅する」「繁忙期は早めに出社する」などの柔軟なスケジュールも実現可能になります。業務の繁閑にかかわらず一律で所定労働時間を設けるよりも、メリハリのついた業務スケジュールを計画可能にすることで従業員の集中力も高まり、結果的に労働生産性の向上が期待できます。
●人材の定着化・採用の促進
例えば子育てや介護などの事情で定時より早い退社が必要な人材に対して、フレックスタイム制を採用している企業であれば始業時刻や終業時刻を調整できます。テレワークや時短勤務など柔軟なワークスタイルの提供は、ライフステージの変化に伴う従業員の離職を防ぎ、さまざまな募集人材へのアピールにつながります。求人票に「在宅勤務可」や「テレワーク可」といった内容を記載しただけで、就職希望率が約2倍になったという事例もあり、結果的に人材の定着化と採用の促進が期待できます。
●コスト削減・BCP対策
働き方改革に取り組み、新たな制度を導入した結果、長期的なコスト削減につながることもあります。例えば、大阪本社の“地方営業員”として関東在住の従業員をテレワークで現地雇用した場合、オフィス賃料や出張交通費の削減を叶えながら、営業力を強化することが可能となります。
また、日本は地震、台風、火山噴火などさまざまな自然災害が想定される国です。BCP(事業継続計画)を考える上でも「テレワークの推進=業務場所の分散化」への取り組みは有効策になります。
【従業員側のメリット】

●ワークライフバランスの改善
例えば、フレックスタイム制を導入することで従業員の始業・終業時刻を臨機応変に調整できるようになります。その結果、ワークライフバランスが改善され、従業員がプライベートの時間を確保しやすくなります。また、電車の混雑が少ない時間での通勤も可能となり、体力的・精神的な負担も軽減されるでしょう。
「1.働き方改革とは」で述べたように、世代ひとつをとっても各個人での仕事への考え方は異なります。従業員が仕事において高いパフォーマンスを発揮するためには、ワークライフバランスの改善は大切な要素といえるでしょう。
●時間や場所にとらわれない、柔軟な働き方が可能になる
テレワークとフレックスタイム制をかけ合わせることによって、さまざまな効果が期待できます。育児や家事だけでなく、介護と仕事の両立を目指す従業員にとって、働きやすい環境が整うはずです。
特に、高齢化が進み、要介護人口は増加傾向にあります。介護者は40-50代が中心で、企業では働き盛りで管理職などの職にある方も少なくありません。こうした中、介護は突発的に問題が発生することや、人によって介護を行う期間や難易度も多様なため、仕事と介護の両立が困難になることがあります。
そういったときに、テレワークやフレックスタイム制を活用できるように整備している企業では、働き盛りの従業員を離職させるのではなく、制度を利用して働き続けることを選択肢に入れることが可能になります。
まとめ

ここまで「働き方改革」の具体例やメリットついてご紹介いたしました。
人的リソースの活用・企業の存続・発展において、働き方改革への取り組みは、避けて通れないと言っても過言ではありません。まずは企業が抱える課題を整理し対応策を考える必要があります。
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