COLUMN
コラム

企業買収のメリット、成功に向けて重要なこと
近年、M&Aは大企業だけでなく中小企業同士や個人間でも盛んに行われています。
過去のM&A支援課コラムでは、企業を手放す経営者の視点から、その不安の原因とM&A事情についてご紹介いただきました。
今回は、企業買収のメリットと成功に向けて重要なことを、M&A支援課の倉橋さんに伺います。
目次
企業買収は成功企業だけの選択肢?
企業買収と聞くと、大企業のニュースや、売上が好調な企業が行うものといったイメージを持つ方も多いと思います。実際はどのような企業にとって、企業買収は有効といえるのでしょうか。
「企業買収という選択肢は、大企業だけに限られたものではありません。確かに、大企業や急成長している企業の買収は目立ったニュースになりやすいですが、私は後がなくなりつつある企業にこそ、現状を脱却するために企業買収を前向きに検討してほしいと考えています」
企業が買収を検討するきっかけはさまざまですが、M&Aで企業買収をする最大のメリットは「変化に必要な時間を買えること」と倉橋さんは話します。

「昨今はVUCA時代とも表現されるように、物事の変化がはやく、予測が難しい時代になりました。そんな時に企業を成長させていくには、新規事業参入にせよ、既存事業拡大にせよ『はやく事業として成立させること』を重視しなくてはいけません。
新たなチャレンジには変化が伴います。人材採用、販路拡大、設備増設など、いずれも予算と時間が必要なものばかりです。市場縮小や売上低迷を感じている企業にこそ変化が必要にもかかわらず、抱えているリソースではスピード感のある対応が困難だと感じます。
そんな中で、目的に合う事業や企業を買収することは、時代に合った『スピード感のある変化』を買っているのだと私は考えます。他にもさまざまなメリットはありますが、これこそ中小零細企業にも企業買収を検討していただきたい理由です」
買収する企業をどう決めるか
では、いざ企業買収を行おうと思った場合、どのように買収する企業を決定すればよいのでしょうか。
「どのような企業を買収するか決める際、まずは自社事業のポジションを把握し『既存事業拡大』か『新規事業参入』、どちらに舵を切るか決定しなくてはなりません。決定に必要な考え方の一例として、メーカーを例に『水平統合』と『垂直統合』をご紹介します」

「規模拡大のために同業他社を買収することを『水平統合』、自社製品の流通フローを図にした時の上流または下流工程にある業種の企業を買収することを『垂直統合』と言います。水平統合では『規模の拡大、競合の吸収、ノウハウのある従業員の確保』、垂直統合では『新規事業への進出、現在の流通コスト削減』などが実現できます」
また、倉橋さんは「新規事業に進出する場合は、投資の場面でも活用される『PPMフレームワーク』を参考に、既存事業と新規事業のポジションを客観的に判断する必要がある」と言います。

「例えば、既存事業が『金のなる木』に該当する場合、市場成長率が低いことから競合の心配が少なく、市場シェアをとっているため多くの利益をもたらします。すでに成功している事業と言えますが、ユーザーニーズの変化などにより市場自体が縮小する場合に備え、『問題児』や『花形』となる事業に投資していくことが必要です。
そして、既存事業が『負け犬』のエリアに該当し新たなニーズを生み出せる革新的なアイデアがない場合、企業は衰退してしまいます。そのような状況を打破し事業計画を立て直すためにも、企業買収による新規事業への参入には大きなメリットがあるのです」
買収する企業が水平統合・垂直統合のどちらにも当てはまらない場合については、「戦略をもって全く異業種の事業を買収し成功することもあるので、考え方はあくまで参考として活用してほしい」とお話しくださいました。
買収成功に向けて重要なこと
買い手企業にとって最も重要なことは「条件の絞り込み」と倉橋さんは言います。
「M&A市場は、売り手よりも買い手が多い状況が続いているため、良い売り手には多くの声がかかります。そんな中で買い手となる経営者の方が『なんとなく良い企業があれば教えて』という姿勢では、売り手を紹介しているアドバイザーも困ってしまいますよね。
まずは既存事業の状況を見直し、今回お伝えした考え方を参考に買収先のイメージと譲れない条件を絞り込んでいただきたいです」
また、明確な経営プランを持つことは売り手企業に対する信頼構築にもつながると、倉橋さんは続けます。
「経営者の方にとって、築き上げてきた企業は『わが子』のような存在です。大切な企業だからこそ『なぜ買おうと思ったのか?引き継いだ後も事業や従業員を大切にしてくれるだろうか?』といった部分を慎重に見られます。そのため、買い手となる経営者の方が買収後の明確な経営ブランを持っていることは、売り手企業の方々にとっても、信頼できる要素と言えます」

まとめ
昨今はインターネットプラットフォームの台頭により、企業規模に関わらずM&Aを行いやすい状況になりました。しかし、闇雲に企業を買収すれば良いわけではありません。
買収成功のため重要なのは「既存事業を把握し、戦略を持って買収先の条件を絞り込む」こと。企業買収を検討されている方は、ぜひご参考ください。
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