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技能実習制度が廃止?新制度開始前に知るべき実情と課題
2023年4月、政府の有識者会議が行われ、技能実習制度を廃止し、新たな制度の創設を検討すべきという中間報告書(たたき台)がまとめられました。
新制度が確定するまではまだ先とはいえ、技能実習制度をはじめ、外国人労働者が抱える課題について正しく理解する良い機会ではないでしょうか。
外国人の雇用を考えている企業の方も、既に外国人を雇用している企業の方もぜひご一読ください。
目次
技能実習制度とは

技能実習制度とは、日本から開発途上地域等への技能・技術の移転を通じた人材育成制度であり、1993年に創設されました。この制度は、あくまでも国際協力の一環とされており、労働力不足の解消を目的としていないことが特徴です。
技能実習生を受け入れるためには、
①企業が自ら海外の現地法人等の職員を受け入れる
②監理団体(非営利団体)が実習生を受け入れ、企業にて実習を行う
という2つの方法がありますが、全体の約99%が②の手段で監理団体を介して実習生を受け入れています。
監理団体は技能実習生の募集、入国前の各種手続きの支援、実習期間中の受け入れ企業に対する指導や監査などを行います。
「監理団体」という名称に馴染みがない方も多いかもしれませんが、簡単に言うと、企業が技能実習生を雇用するにあたって必要なサポートを行う組織です。
技能実習生は最大5年間実習でき、実習先(受け入れ企業)の途中変更は基本的に認められていません。
また、技能実習には対象となる職種が定められており、2023年3月31日時点で87職種159作業が対象となっています。
よって、技能実習生を受け入れたい場合は、自社の職種や作業が技能実習の対象となっているかを予め確認する必要があります。
日本へ技能実習生を送り出すことのできる国は、現在、二国間協力覚書を締結しているアジア16カ国となりますが、受け入れ手続きや入国前の教育体制などが国によって異なるため、日本企業はどの国から実習生を受け入れるかを慎重に検討する必要があります。
入国前の実習生は母国の送り出し機関にて、4~6カ月(介護職であれば9カ月程度)の日本語教育を受けた後で日本へ渡るため、一般的に人材の募集から入国までは6~8カ月程度かかります。初めての場合は特に、監理団体と一緒に受け入れスケジュールを立てる方が安心です。
なぜ制度の見直しが図られているのか

ではなぜ今、技能実習制度の見直しが進んでいるのでしょうか。
背景として主に以下の二つが挙げられます。
①「国際貢献」という目的と「労働力確保」という実態の乖離
前項でも触れたとおり、技能実習制度の本来の目的は、発展途上地域等への技術移転を通じた「国際貢献」であるものの、現実は労働力不足を補うために技能実習生を受け入れている企業がほとんどであるのが実態です。
この度の有識者会議では、長年指摘されてきたこの乖離を無くすべく、「人材確保」と「人材育成」を目的とする「実態に即した」新制度を設立する案がまとめられています。
②転籍不可と母国での借金
技能実習生は、原則として実習期間中に他の企業へ転籍することが認められていません。残念ながら、技能実習生が転籍できないルールをいいことに、賃金の未払いや暴行などの重大な過失が発生してしまうこともあります。また、別の問題として、技能実習生は来日するために借金をしていることが多いです。そのため、上記のような賃金未払い等の問題が発生していても、借金が返せない状況では帰国するわけにもいかず、結果として技能実習生が失踪してしまうことがあります。
このような実情を踏まえ、新制度案には、転籍制限の緩和についても組み込まれています。
なお、新制度案は、2019年から導入された「特定技能制度※」へ組み入れるわけではなく、技能実習生が特定技能へステップアップするための新しい制度として位置づけられています。
※特定技能制度:労働力が不足している一部産業分野等において、専門性・技能を有する外国人材を即戦力として受け入れる制度
外国人雇用のメリット、デメリット

技能実習制度の概要を踏まえ、外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットを簡単に紹介します。
<メリット>
・外国人労働者の多くは20代のため、若い人材の影響によって組織の活性化が期待できる。
・日本人では応募が集まりにくい職種でもほぼ確実に募集人数以上の応募がある。
・事業拡大に向けた海外進出の足掛かりとなる。
<デメリット>
・言葉でのコミュニケーションが取りづらい場合がある。
・制度によっては雇用期間の定めがある。
デメリットがあることで受け入れを躊躇する企業もあるかもしれません。
しかしながら、受け入れ後も監理団体が継続的にフォローする点や、1期生、2期生…と外国人労働者を継続的に受け入れることによって、途切れることなく人材を確保することができる点を考慮すれば、人材の定着や採用に関する悩みを長らく抱えている企業で職種の受け入れ条件が合う場合は、受け入れを検討する価値が大いにあります。
まとめ

労働人口が年々減少している日本において、外国人を雇用することはどの企業にとってもひとごとではなくなってきています。
他社から出遅れないためにも、技能実習制度見直しの動きは今後も注視していく必要があるでしょう。
北浜グローバル経営では、日本人・外国人を問わず、企業の雇用に関する課題解決のためのご支援を行っております。
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