COLUMN
コラム

企業価格はどう決まる?M&Aのバリュエーションを解説!(前編)
M&Aを進める中で、譲渡と買収の希望価格に差が生じることはよくあります。
交渉は主に企業価格に関することです。社長の思いが必ずしも価格に反映されるとは限らず、売り手と買い手、双方の納得感が必要になります。
では、双方にとって納得感がある企業価格とはどのように算出するのでしょうか?
企業価値を客観的に判断する「バリュエーション」を、二回に分けてご紹介します。
今回は基礎知識編です。次回は具体的な算出方法を予定しています。
・M&Aの基礎を知りたい
・専門家に算出された企業価格の根拠を知りたい
すでに「バリュエーション」の基礎をご存じの方は
≫後編コラム「算出方法の具体的な流れ」を読む
目次
M&Aの“バリュエーション”とは?

前述の通り、M&Aでは売り手と買い手にとって納得感のある企業価格を見つけることが重要です。
そこで使用されるのが「バリュエーション(企業価値の評価)」です。
バリュエーションにはさまざまな考え方があり、価格の公平性を担保するためM&A仲介会社など第三者による評価を参考にすることが一般的です。
バリュエーション3つの考え方
バリュエーションは大きく3つの考え方に分けられます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来発生が見込まれる収益(インカム)やキャッシュフローに注目し、企業を評価する方法です。
中長期的な事業計画書を用いて、キャッシュフローの予想を立てながら企業価値を算出します。実績や創業年数よりも企業の将来性に注目するので、ベンチャー企業など創業年数が浅い企業にも有効です。
【メリット】
・企業の将来性を軸に評価できる。
・事業計画に将来の企業価値につながる要素を反映できれば、創業年数に関わらず企業評価を高められる。
【デメリット】
・キャッシュフローの予測が主観的になりやすく、個人ごとに予想がブレやすい。
・実現性の高い事業計画を立てることができない場合、交渉が難しくなる。
・DCF法
・収益還元法
・配当還元法
マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、類似する上場企業やM&A取引を参考に企業価値を評価する方法です。
未上場の中小企業であっても、類似する上場企業と比較することで相対的な企業評価を行うことができます。客観性の補足として他の評価方法と合わせることも多く、さまざまな企業の評価に用いることが可能です。
【メリット】
類似する企業や取引を事例として参考にするため、一定の客観性が担保できる。
市場の需要や傾向などの市場環境を評価基準に織り込みやすい。
【デメリット】
類似する事業内容の上場企業を見つけることが困難な場合がある。
常に変動している株式市場の影響を受けやすい。
(類似企業の株価が下落した場合などは正しい判断ができない)
・類似業種比較法
・類似企業比較法
・市場株価法
・類似取引比較法
コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の純資産に軸を置いて評価する方法です。
中小企業のM&Aで用いられることが多く、積み上げた純資産と今後の収益の両方を考慮できます。培った資産が評価対象のため、創業年数の長い会社や固定資産の大きい会社ほど評価の客観性を高め、納得感を増すことができます。
【メリット】
・財務諸表の数値と決まった式を用いるため評価方法がシンプル。
・根拠がブレにくく、客観性に優れた評価ができる。
【デメリット】
・創業から年数が短い企業は評価が難しい。
・財務諸表に載らない無形資産(取引先との関係性、従業員の能力、特許数など)が評価に反映されない。(無形資産の評価をカバーするため、企業評価に“のれん”〈税引前営業利益の1〜3年分〉を上乗せする方法もある)
・簿価純資産法
・時価純資産法
・年買法(時価純資産+営業権)
・清算価値法
・再調達原価法
まとめ

バリュエーションの基礎知識として「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」「コストアプローチ」3つの考え方を解説しました。企業価値の評価基準や算出方法を知りたい方の参考になれば幸いです。
次回のM&Aコラムでは、マーケットアプローチ、インカムアプローチの代表的な算出方法をご紹介します。
中小企業のM&Aにおいて唯一絶対のバリュエーションはありません。
実際は二つ以上のアプローチを行い、それぞれの企業評価を見ながら交渉を進めていく場合がほとんどです。
M&A支援課では、事業承継・M&Aを円滑に行うための支援を行っています。初期段階から企業価値の算定、交渉も可能です。
事業承継・M&Aを成功させるためのパートナーをお探しの方は、ぜひ当社へご相談ください。