企業価格はどう決まる?M&Aのバリュエーションを解説!(後編) | 北浜グローバル経営株式会社

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企業価格はどう決まる?M&Aのバリュエーションを解説!(後編)

前回のM&Aコラムでは、M&Aの交渉で最も重要な「バリュエーション(企業価値の評価)」について、3つの考え方と、それぞれの特徴をご紹介しました。

インカムアプローチは、将来の収益に注目する評価方法、
マーケットアプローチは、類似企業やM&A取引の相場を参考にする評価方法、
コストアプローチは、企業が積み上げてきた純資産を軸に評価する方法です。
後編では、それぞれの代表的な算出方法の大まかな流れをご紹介します。

こんな人におすすめ
・企業価格の算出方法を知りたい
・M&Aの基礎を知りたい
・専門家に算出された企業価格の根拠を知りたい

 

インカムアプローチ「DCF法」

インカムアプローチは、将来発生が見込まれる収益(インカム)やキャッシュフローに注目し企業を評価する方法です。収益還元法、配当還元法、DCF法が該当しますが、中でも代表的な「DCF法」の考え方についてご紹介します。

ーDCF法とは?
Discounted Cash Flow(割り引かれたキャッシュフロー)の略で、将来得られる予定の収益を現在の価値に割り引いて計算する方法です。企業の将来のキャッシュフローを予測し、現在の企業価値を算定します。

大まかな算出手順は以下の通りです。

①予測期間を決め、フリーキャッシュフローを算出
DCF法では初めに「何年先までFCFの予測を立てるか」を決めます。一般的には5年程先まで予測を立て、期間中の事業状況を予想しながら年数分の損益計算書や貸借対照表等を作成します。

※フリーキャッシュフロー(企業が生み出すキャッシュフロー)

②割引率の決定
割引率は「加重平均資本コスト(WACC)」を用いて決定します。DCF法には「時間の経過によって資本の価値は増加する」という考え方があるため、予測した将来のFCFを現在の価値に割り引きます。

加重平均資本コスト(WACC)とは?
資本コストの代表的な計算方法で、借入にかかるコストと株式調達にかかるコストを加重平均したもの。
企業が資金を1円調達するために、どれだけのコストがかかるかを算出します。

[加重平均資本コスト(WACC)の計算式]
WACC=D/(D+E) × rD(1-T) + E/(D+E) × rE

D:負債総額
E:株式の時価総額(=株価×発行済み株式数)
rD:負債コスト
rE:株主資本コスト
T:実効税率

③企業価値を算定
①のフリーキャッシュフローと、②のWACCを用いて「企業価値」を算定します。
複雑な計算式は割愛しますが、企業価値は「現在価値に割り引いた予測期間中のFCF」と「予測期間以降の残存価値」を計算し、合わせることで算定できます。

POINT
DCF法は将来発生する予定のキャッシュフローに着目するため、ベンチャー企業等、歴史が浅い企業の評価にも向いています。
ただし、FCF予測の立て方や割引率となる加重平均資本コスト(WACC)の算定は専門家の中でも個人差があります。予測次第で大きく算定額が変動するので、その点は注意が必要です。

マーケットアプローチ「類似企業比較法(マルチプル法)」

マーケットアプローチは、類似する上場企業やM&A取引を参考に企業価値を評価する方法です。
類似企業比較法、類似取引比較法、市場株価法が該当しますが、今回はM&Aでよく使われる「類似企業比較法(マルチプル法)」をご紹介します。

ー類似企業比較法(マルチプル法)とは?
評価対象企業と業種や業態が類似する上場企業の財務数値を比較することで、企業を評価する方法です。

純資産や利益などの財務指標から算出された評価倍率(マルチプル)を対象の企業に適用することで、企業価値を算出します。

大まかな算出手順は以下の通りです。

①類似企業を複数選定
業種や業態、財務の状態も含め、特徴が類似している上場企業を複数選定します。
選定時には、サービスの内容や企業規模だけでなく収益構造や事業成長率など本質的な部分にも注目することが重要です。

②評価倍率(マルチプル)を決定
類似企業を選定した後は、対象企業の評価にふさわしい指標を決めましょう。
企業評価にはEBITDAなど、さまざまな経済指標を用いることができます。指標が決定したら、選定した類似企業ごとに評価倍率(マルチプル)を計算し平均値や中央値を算出します。対象企業にこれらを掛けて企業価値を算出します。

※税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略)。

POINT
類似企業比較法(マルチプル法)では、未上場企業のような市場株価が存在しない企業も、類似する上場企業と比較することで相対的な企業評価を行うことができます。どの企業が似ていると考えるかは計算者によって異なります。評価倍率も比較する企業によって結果は異なります。

コストアプローチ「年買法(時価純資産+営業権)」

コストアプローチは、企業が積み上げてきた純資産を軸に企業を評価する方法です。
簿価純資産法、時価純資産法、清算価値法、再調達原価法などの種類があり、企業の純資産をもとに評価するので結果がブレにくく客観性が高いのが特徴です。ただ、無形資産が評価に反映されにくいという面もあります。

※取引先との関係性、従業員の能力、特許数など財務諸表に載らない資産

このデメリットをカバーする「年買法(時価純資産+営業権)」があります。
詳しくは、年買法をご紹介した過去コラムをご覧ください。

関連コラム「中小企業のM&Aにおける株価の算出方法(年買法)」を読む

まとめ

ここまで、企業価値の算出方法の大まかな流れを3つご紹介しました。
実際のM&Aでは企業価値の算定を専門家が行いますが、その根拠となる考え方を理解していた方が、経営者の皆様にとっても納得した上で交渉が進められるのではないかと考えます。

インカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチ、どの方法にも長所と短所があります。一つの考え方で全員が納得できる企業価値を算出することは困難なため、複数の方法を併用しながら交渉を進めましょう。

M&A支援課では、事業承継・M&Aを円滑に行うための支援を行っています。
初期段階から企業価値の算定、交渉も可能です。

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